わたしのアイディアの源は…

私はモノを作る時に思う事は、2つのパターンがあるようです。

ひとつ目は生活道具を作る時には誰かのニーズが先にあって作り始めるパターンです。心地よく使ってくれるために考えるデザインであらねばならないと思います。使うときにその道具と扱う人が絵になるようなモノを作りたいと思います。

ふたつ目は、目に映る風景の中の人工物が静かに朽ち果てていく姿に出会う。例えば小さな港を散歩しているときによく目にする古い船。その船体の塗装が剥げて錆びた部分、スクリューにこびりついたフジツボ、錆 び付いたイカリや漁具。岡には古い同じ形をした網納屋が整列している。幾年も潮風にさらされて剥がれた塗装を何度も塗り重ねられ遂には一枚の抽象画のように存在感を得た錆鉄の扉。

沖に目をやると穏やかな瀬戸内海の緑青の中に白い古びた灯台が佇んでいる。雨の日も風の日も嵐の日も穏やかな日も沖を行く船の道しるべとして毎日独り信号を発し続けている。彼もまた何十年という月日がもたらした経年変化というドレスを纏って佇んでいる。
そんな風景に出会った時に私はモノづくりの重要な栄養として身と心に沁み込ませるようにしています。